西日本最大の国際展示場「インテックス大阪」が、2027年度(令和9年度)より大規模な改修工事に着手する。1985年の開業から40年を経て老朽化が進む中、大阪・関西万博や将来的なIR(統合型リゾート)開業を見据え、施設の長寿命化と機能強化を図る狙いだ。
最新の発表に基づき、改修計画の詳細とその背景にある大阪ベイエリアのMICE戦略について解説する。
40年の歴史を持つ「西の拠点」の現状
1985年(昭和60年)5月、大阪国際見本市港会場の後継として南港(咲洲)に開業したインテックス大阪は、本年で開業40周年を迎えた。総展示面積70,000㎡(1号館~6号館)を誇る西日本最大、国内でも有数の規模を持つ国際見本市会場である。
これまでに総催事件数5,000件以上、総来場者数1.3億人を超え、BtoBの産業展示会から「G20大阪サミット」(2019年)といった国際会議、エンターテインメントイベントまで幅広く活用されてきた。しかし、40年の歳月を経て建物や設備の老朽化は避けられない課題となっていた。
開業40周年を迎えたインテックス大阪。西日本最大のMICE拠点として稼働を続ける。
2027年改修計画の具体的内容
一般財団法人大阪国際経済振興センターの発表および大阪市の計画によると、今回の改修は施設の「長寿命化」を主眼に置き、2027年度(令和9年度)から開始される。特筆すべきは、全館休館ではなく、営業を継続しながら段階的に工事を進める点である。
3号館の休館スケジュール
現在公表されている具体的な休館情報は以下の通りである。
3号館 休館期間:
2027年(令和9年)4月1日 ~ 2028年(令和10年)3月31日
※上記期間、3号館は利用不可となる。
主催者にとって最も影響が大きいのは、特定の展示館が長期間利用できなくなる点だ。まずは3号館が約1年間の改修に入ることが確定しており、他の館についても順次、計画的な改修が進められる見通しである。これにより、主催者は2027年度以降の会場確保において、使用可能な展示面積の変動を考慮に入れた計画立案が必要となる。
改修の背景:IR開業とエリア別役割分担
今回の改修計画は、単なる老朽化対策にとどまらず、大阪ベイエリア全体のMICE戦略と密接に連動している。特に重要なのが、隣接する夢洲(ゆめしま)で計画されているIR(統合型リゾート)との役割分担である。
夢洲IRにおけるMICE施設整備計画
大阪IR計画では、国際会議場や展示施設の整備が段階的に進められる予定である。最新の計画では、展示施設の規模は以下のように拡張される見込みだ。
| フェーズ | 時期(予定) | IR展示施設規模 |
|---|---|---|
| 開業時 | 2030年頃 | 約20,000㎡ |
| 拡張期 | 2045年頃 | 約60,000㎡ |
| 最終形 | 2058年頃 | 約100,000㎡ |
当初、IR開業時に10万㎡規模の展示場を整備する構想もあったが、現在は段階的整備へと修正されている。2030年のIR開業時点では展示面積は約2万㎡にとどまるため、7万㎡を有するインテックス大阪は、引き続き大規模展示会や見本市の受け皿として不可欠な存在であり続ける。
大阪市は、「インテックス大阪(咲洲)」と「IR(夢洲)」の役割を明確化し、両者が競合するのではなく補完し合う関係を目指している。インテックス大阪は、既存の産業展示会や市民向けイベント等の需要に応えつつ、IRはラグジュアリーな国際会議やインセンティブ旅行(報奨旅行)など、新たなMICE需要を取り込むことが期待されている。
4. 改修方針の検討プロセスと事業スキーム
大阪市経済戦略局は、改修に向けた具体的な方針策定のために「国際見本市会場(インテックス大阪)の改修方針等の検討業務」を実施している。このプロセスでは、以下の7つの視点から詳細な検討が行われている。
- 現状課題と主催者ニーズの整理: 既存顧客へのヒアリングを通じた機能要件の洗い出し。
- 適正な展示面積の検討: 将来の需要予測に基づき、インテックス大阪として維持すべき規模の算出。
- 事業スキームの最適化: 従来の公設民営方式だけでなく、指定管理者制度やPFI(Private Finance Initiative)など、民間活力を導入した効率的な運営・改修手法の比較検討。
また、施設機能の向上として、展示館の改修だけでなく、通信インフラの刷新や環境性能の向上、防災機能の強化なども検討項目に含まれていると考えられる。
5. 今後の展望:国際競争力あるMICE拠点へ
2025年の「大阪・関西万博」は、大阪のプレゼンスを世界に示す絶好の機会となる。その後の2027年からの改修工事は、万博後のレガシーを継承し、2030年のIR開業へとつなぐ重要なフェーズとなる。
インテックス大阪の改修は、単に建物を直すだけではない。国内では東京ビッグサイトや幕張メッセといった巨大施設が存在し、愛知では新展示場の開業も控えている。都市間競争が激化する中、大阪が西日本のMICE拠点としての地位を維持・強化するためには、ハード面の刷新と同時に、ソフト面(運営サービス、誘致戦略)での進化も求められる。
主催者・出展者にとっては、工事期間中の制約はあるものの、長期的にはより快適で高機能な展示環境が提供されることへの期待が大きい。今後の具体的な工事スケジュールや、改修後のスペック詳細については、大阪市および運営財団からの続報を注視する必要がある。
